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■「この役で私は俳優として昇天できた」
「この役柄の重さを考えたらね。
最初は断ろうと思っていたんです。
でも引き受けてよかった。
この役で私は俳優として昇天できたから」。
平成20年に公開された最後の主演映画「明日への遺言」の撮影を終えた藤田まことさんは、取材でこう言い切った。
取材日、すでにガンで体調を崩し予定時間は30分ほど。
だが、「まだいいよ」と大幅に時間を過ぎても話し続けてくれた。
[フォト]はまり役だった「必殺!シリーズ」の中村主水
第二次大戦後の軍事法廷で、名古屋を空襲した米軍パイロットを処刑した罪で死刑となった岡田資(たすく)中将を演じた。
B級戦犯者でただ一人、米国の戦争責任を問い部下を守り死刑となった実在の人物。
「人格、年齢的にも藤田さんしかいない」と小泉堯史(たかし)監督が藤田さんを指名した。
「実はずっと躊躇(ちゅうちょ)した...」。
渋る藤田さんに小泉監督は、岡田中将に関する資料を送り続けた。
半年後、藤田さんは出演を決意する。
「小泉監督が送ってくれる資料を読んでいるうちに、自然と役作りができていましてね」。
こう笑いながら明かしたが、「実は私は兄を戦地で失っている。
戦後、食べるために米兵の靴磨きをしていたこともある。
私には戦争の真実を伝える義務がある」という熱い思いも背中を押した。
「役者をしているとね。
不思議な経験をすることがあるんですよ」。
映画の最後、岡田中将が巣鴨プリズンで処刑台に向かうシーンがある。
月光のなか、グラウンドを歩く場面だ。
「もう演じているという状態ではなかった。
私は岡田中将と完全に一体となれた。
最後の13階段を上る気分は無の境地だった。
岡田中将のおだやかな気持ちだったんです...」
カメラの真横で藤田さんを見守っていた小泉監督は思いだす。
「藤田さんが月光に向かい絞首刑に向かう場面は、まるで岡田中将が乗り移ったかのようでした。
その姿は本当に美しかった。
改めて藤田さんに依頼してよかったと感じた。
次も一緒にやりましょうと話していただけにとても残念です」(戸津井康之)
◇
「てなもんや三度笠」で共演した俳優の白木みのるさんの話 「テレビの草創期に一緒になってがんばってきた仲でしたので、悲しいですね。
私はお客を笑わしてなんぼですが、藤田さんは芝居がしっかりしていて、時代劇、刑事もの、なんでもできるモダンな方で、感心していました。
平成19年の大阪・御堂筋パレードでご一緒したのが最後になりました。
互いに頑張ってるな、これからも元気にやっていこう、と言い合っていたのに残念です」
◇
「ムコ殿」のセリフで知られる女優の菅井きんさんの話 「一昨年、『必殺』の2時間スペシャルで、ご一緒したのは、病院から退院されてしばらくの時でした。
その折には『お互い体をいたわりましょう』と話され、反対に私の体を心配してくれたものです。
残念でしかたありません」
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最終更新:2月19日7時56分
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